美しい国へ

美しい国へ (文春新書)

美しい国へ (文春新書)

一章に現れている歴史認識と主張については概ね同意する。
しかし、

わたしも、首班指名のとき、社会党村山富市氏に一票を入れたひとりである。野党の自民党が、早期に政権復帰するには、それしか道がなかったのだ。

というのはあまりに無残な言い訳だ。
理念もなくただ自分達が権力の座に復帰するという欲望だけが理由で、日本の有権者をバカにした社会党との"野合"をやったのだと自ら認めている。


二章について、「『経済制裁効果なし』の根拠なし」が大間違いだったことは、経済制裁を実行した結果、今の日本の対北朝鮮政策が完全に行き詰まってしまったことから歴史が安倍の間違いを証明した。


三章について、「ナショナリズム」という表題自体にもうウンザリするばかりだが、「天皇は歴史上ずっと象徴だった」というのは嘘。平城京の時代において天皇陛下が親政を行っていたことは歴史的事実であるし、天皇陛下は少なくとも明治維新から日本国憲法成立の辺りまで「統治権ヲ総攬」していたのであって、明らかに国の統治システムの頂点に立っていた。特攻隊の若者を美化するのは結構だが、特攻隊の若者を殺したのは、日本人を400万人も殺す愚かな戦争を選択し、兵士には死ねと命令しながら敗戦にあたって自決もできなかった醜い当時の支配層だったことも書かねばフェアではない。


四章・五章については、私自身あまり詳しくないこともあり特に書くことなし。

六章については大筋同意。

七章は最悪で、教師を国家が「選別」すると宣言している点、子供たちに自分達のモラルを押しつけようとする点が野蛮極まりない発想である。教師や子供(の親)は愚かだから国(=オレ)が指導してやると言っているわけで、よくもこれだけ傲慢な口を利けたものである。また、安倍は「若者は強制的にボランティアさせるべき」と主張しているが、ドイツも「社会奉仕活動」という名目で実質的な徴兵を行っていたことを考えれば、安倍の狙いは明らかである。