22歳からの国語力

22歳からの国語力 (講談社現代新書)

22歳からの国語力 (講談社現代新書)

「国語力」の本なのに出だしから「俺が、俺が……」で面白くもなんともないのはどうしたものか。
この本を要約すれば、5W1Hにコンテクストを加えて徹底しろという理屈以外には「会社で受けるようなネタを用意しておけ」と書いてあるに過ぎない。
後者については、例えば「好きなものベスト3を用意しておけ!」「司馬遼太郎を読め!」と言った内容の羅列。もちろんそうした外面作りも必要なことはあるだろうが、筆者はそうやって用意した外面を「本当の自分」だと思ってるみたいで、読んでいてちょっと恐怖を覚えた。
「私の好きな本ベスト3は1位:はてしない物語、2位:自分の中に毒を持て、3位:かつて です! 私の好きな映画は――私の好きな音楽アルバムは――」と即答できることが自分を知ることであり、またそれを言うことで他者に自分が理解されたと心から信じられるような人にはお勧めできる本かもしれない。
私には浅薄極まりない……というかいっそ可哀想にしか思えないが。
ちなみにこの本の帯には「マニュアルを捨て、本物のコミュニケーション力を鍛えるために」とある。実際のこの本はマニュアル論に終始しており、上っ面のコミュニケーションを薦めているわけだから、意図せずして皮肉になってしまっていると思う。