プロジェクトX挑戦者たち―コミック版 執念が生んだ新幹線

日本の新幹線と言えば大したもので、まだまだ日本が発展途上国とみなされていた1964年に世界最高速の高速鉄道として開通した。
その後50年近くに渡り殆ど無事故と言える安全性を維持し、また非常に快適な乗り心地をも実現している。
そんな新幹線が誕生する経緯を描いた漫画。


さすが、日本が世界に誇る技術の結晶とも言うべき新幹線の誕生には、多くの偉業が折り重なっていることがわかる。

  • 元来技術的に保守的だった鉄道が、革新的な技術を採り入れるというパラダイムシフトがあった
  • その革新的な技術の中心は、満州鉄道で得られた技術や零戦・桜花といった戦闘機の技術など、戦争の技術である。新幹線事業には職にあぶれた戦争技術者の再雇用という側面があった
  • しかしながら革新的な技術者を取りまとめ新幹線の生みの親とされる島秀雄は保守的であり、革新的な技術を安全・堅牢に取りまとめた
  • 国鉄総裁である十河信二がクビを差し出してまで予算を確保した

十河も島も実は能力的には大したことがないという評がある。あながち間違っていないと思う。
しかし、それは新幹線という奇跡の価値を貶めるものでは何らない。
むしろ、情熱と熱意は発展途上国に先進国以上の成果をもたらし、凡庸な者に夢の実現をもたらすということを、日本の新幹線は体現したのだと言える。
実に痛快な話ではないか*1

*1:だが、新幹線実現の大きな壁となった硬直的な予算の単年度主義の弊害は、2011年の日本においても未だ解消されていない。