日本初のハイウエー勝負は天王山

天王山といえば豊臣秀吉明智光秀が天下争いをした京都の山のことで、勝負を決める分岐点を意味する言葉でもある。
この天王山にトンネルを通す作業、また高速道路に使うアスファルトの研究をハイライトとして日本初の高速道路である名神高速道路完成までの物語を描く。
トンネルとアスファルトをハイライトに置くのは理由がある。というのも、新幹線に比べると日本の高速道路というのは今も昔もパッとしない存在なのだ。世界最先端の技術だった新幹線に比べ高速道路は建設が欧米に50年近くも遅れており、現代に至っても先進国の高速道路で無料化していないのは日本くらいである。そんなチョット残念な高速道路だが、そこに使われたトンネル技術は世界最高峰のもので、日本は世界に名だたる青函トンネルを初め、世界中の主要なトンネル建設に関わっている。また、日本のマテリアル技術も世界トップクラスであるが、名神高速道路に使われたアスファルトも『名神の路面は完璧』と評されるものであった。
というわけで「高速道路を作ったこと自体は自慢できることじゃないけど、天王山にトンネルを掘ったのと凄いアスファルトを使ったことは誇れるよ」というのが、日本初の高速道路に与えられる評価であろう。
とはいえ、トンネル掘りに使われたアーチ型のH鋼を作る日本の工業技術や、「道路の神」と呼ばれた技官による革新的な施工管理、そして土木作業員に至るまでの情熱・真面目さの存在も決して忘れられないだろう*1
高速道路建設はまさに当時の、そして現代の日本の縮図である。

*1:反面、現在も日本特有の問題として語られる用地取得の困難という影にも直面している