ホテル探偵ドール

ホテル探偵Doll (My First WIDE)

ホテル探偵Doll (My First WIDE)

ホテル探偵は実在する職業で、ミステリーの世界では結構活躍するらしい。
正直中盤は単なる「救いのない話」だらけで面白くないが、終盤となる#15以降は良い出来となる。
#1 大統領到着前
作中登場する「ジェットマグナム弾」とはおそらくコレのこと。
マグナムの初速が319m/sなのに対してこれは最高速1250ft/s(381m/s)なので大差ないじゃないかとか、DOLLは結構至近距離で撃ってるじゃないかとか色々突っ込めるが、そりゃ野暮というもの。
話としてはオーソドックスな作りだった。DOLLの仕事の紹介といったところか。
#2 古城は死せず
近代兵器すらものともしない古城の凄さ、偉大さがメインテーマ。登場人物を絞りに絞って自然の美しさを圧倒的な筆致で描いている。
まあ、それだけじゃちと華が足りんと思ったのか、DOLLのシャワーシーンもあるのだが。
さて、イギリスの貴族といえばキツネ狩りだが、キツネ肉ってあんまり美味しくなさそうだなぁと思う。調べたところ、やっぱり相当臭いようだ。最近は環境団体に虐められてすっかり下火になってしまったそうな。
#3 ナイトマネージャー
これは……いいんだろうか?
DOLLはゴルゴ13とは異なり、仕事にかなり私情を持ち込むタイプのようだ。さいとうたかを氏の女性観が現れているのか。
#4 過去からの逃亡者
スリーマイル島原子力発電所事故を受けてだろう、原発によって破滅する男を描く。ただただ悲惨である。
ちなみにこの話といい、#2といい、爆弾が設置されると必ず爆発してしまう。流石にホテル探偵に爆弾の解除は無理ということか。
#5 脚光の裏側
タイトル通りの作品。スター歌手の裏側を描くと共に、都市に引き裂かれる人間性も描いている。
内容はありきたりすぎるか。
#6 フォッグ・ホテル
これもありきたり。
#7 長い1日
これもありきたり。マスターキートンでもこんな話があったゾ。
#8 黄昏ローマ
DOLLは見殺しにしてしまった弟の面影をチンピラに重ねるが、それが仇となり、そのチンピラを自ら手に掛ける結果となる話。DOLLの生い立ちも明かされる。
救いがない。
#9 山に囲まれた町
最悪。
DOLLの幼馴染がDOLLの親友をレイプするわ、それで親友が自殺するわ、親友の親には情知らず呼ばわりされるわで読んでて嫌な気分になれること請け合いの話。
#10 残された時間の中で
老衰をテーマにした話。これまた暗い。
#11 遙かなる国の客
冷戦時代らしい話。
愛する旦那が祖国を裏切ったので殺す妻の話。
#12 帝王の罠
アクションとしては見所が多い。
しかし、DOLLの命を賭けた努力は会長の自己満足のためだった、という唖然とするようなオチ。なんでこんなブラックすぎる職場で働いてるんだかw
ゴルゴ13にも同じタイトルで似たような話があるので、違いを見比べると面白いかも。
#13 風の強い町
DOLLの切り札はゴルゴ13と同じく隠しナイフだった。
ゴルゴ13は投げるのに対してDOLLは斬りつけるという違いがある。
#14 日本からの手紙
ここから少しは救いのある話というか、人情の流れる話に路線変更する。
流石に陰惨な話が多すぎてクレームが来たのだろうか。
五条大橋の牛若丸弁慶像から物語は始まる。
京都サンライズホテルの描写が、まんまホテルニュージャパンで笑ってしまった。
#15 北欧の熱い雪 祖国よ
ポーランドは常にソ連(ロシア)に迫害されてきた歴史を持つが、この作品ではポーランドの英雄たる博士の殺害を博士のポーランド人ボディーガードたちがKGBに強要されるというカタチで国家間の力関係が現れている。
死を覚悟してKGBによる命令に背き、自分を守った祖国の若者たちを見て、博士が亡命を諦めるという結末が印象深い。
ところでこの作によると、ノーベル賞は「研究者に対する今後の激励」の意味もあるという。だからノーベル賞は生存者にしか与えられないのか。
#16 バラの標的
女性の社会進出を快く思わない昔気質の男デイブが、まさに女の愛憎や憤激に巻き込まれる。ヒステリーを起こした女をデイブは止めることができなかったが、DOLLが女性らしい気遣いで事態を収拾させる。
クリスチーナからDOLLがニトログリセリンを受け取るシーンは圧巻。
#17 チャイルド・ファウンド
ナンパな私立探偵レスターが印象的。
最初は職務に徹しようとした彼が、最後は情に絆され職務を放り投げてしまう。
そんな彼に作中最初で最後の笑顔を見せるDOLLも印象的だ(おそらく好きで尊敬もしていたチャーリーと出会う時ですら笑顔ではなかった)。
この二人は今後関係が先に進むのかもしれない……と思わせる、明るい終わり方だった。
DOLLとしてはこれが最終回。
#18 クリスマス・24アワーズ
ゴルゴが鏡を使って正面から打ち殺したように見せかけるトリックは、おそらく最初から計画されていたものだろう。
このトリックがなければ、すぐにホテルに捜査の手が伸びて身が危険だからだ。
そういう意味では、DOLLはゴルゴに歯牙にも掛けられなかったとも言える。