点と点が線になる日本史集中講義

点と点が線になる日本史集中講義

点と点が線になる日本史集中講義

どーも質の悪い説明が多くてイマイチ信用できない。
「軍隊と警察を全廃した平安朝政府(P67)」などと書いているが、そんなバカなことは起きていない。また、武士の起源を有力農民の武装からのみ説明している。実際には貴族も武士の起源である。こうしたミスは彼が軍事貴族を知らないからだろう。
川中島の戦いは、なぜ農閑期に行われたか(P173)」とかはタイトルからしてヤバイ。ちょっと調べれば分かるが農閑期以外にやりまくっている。こんな素人でも1秒で間違いだと分かるような大嘘をタイトルにしてるとか、コイツは大丈夫だろうか(大丈夫じゃないんだろうな)。
言うまでもなく、信長を神格化しすぎである。彼が兵農分離したからエライとするのは川中島の戦いを正しく知れば嘘だとわかるが、信長の「政教分離」も嘘。宗教勢力とは他の武士も戦っていたし、その実情は要するに勢力争いである。信長は単に他の戦国大名と同じことをやったに過ぎない。城下町を発展させたのが信長というのは正しいが。
アメリカが最初に日本に求めていたのは、植民地にしようという野望を満たすことではなく、アメリカの補給基地になってほしいということだったのです(P269)」は書き方が嫌らしい。確かにその通りだが、アメリカに植民地の野望がなかったわけではない。現に当時ハワイは植民地化が進行している真っ最中だったのである。その後フィリピンも植民地化されている。当時アメリカに日本や中国を含む太平洋〜東アジア地域を侵略しようという野心があったことは歴史的事実であり(もっとも日本は人口が多すぎる問題などがあり、不可能だったろうが)、それが無かったかのように書くのはフェアではない。
終盤は歴史学者・左翼批判&日本にはリーダーシップがないから改革がうんたら〜と、おそらくここが一番コイツの書きたいことなんだろうな(笑)と思われる記述が続くが、「天皇は実権がなかったから戦争責任がない」は噴飯モノである。私は左翼じゃないが、大日本帝国憲法の第一条に「大日本帝国は〜天皇がこれを統治す」と書いてあることや太平洋戦争の最終的な決定が御前会議で決まったことくらいは知っている。不祥事を起こした社長が、外部から見れば社長に経営権があることが明らかで、かつその不祥事の原因が社長が参加する会議で決まっていたとして「私に実質的な決定権はなかった」と主張する社長に責任がないと誰が思うだろうか?