図解 孫子の兵法 入門

図解 孫子の兵法 入門 (中経の文庫)

図解 孫子の兵法 入門 (中経の文庫)

んー。
孫子の兵法に当てはまりそうな逸話を集めましたって感じ。
長篠の戦いで勝利した信長が武田氏を討伐しなかったのは孫子の兵法に従ったというよりは当時の大名のやり方(基本的には諜略戦)に従っただけであって、「念には念を入れて武田家を切り崩した」のではなく「切り崩す方が本筋(討伐はその仕上げに過ぎない)」である。
斜線陣戦術」は孫子の言う「兵力の集中」というよりはオリジナルであるレウクトラの戦いにおいて相手の弱点を突く戦術だった。実際、斜線陣戦術っぽい陣形で大敗を喫した例も多いので、無邪気に賞賛するのはいかがかと思う。
また、真珠湾攻撃において戦果の拡大を図らなかった点を批判しているが、真珠湾攻撃において真に批判されるべきは戦果の大小ではなくアメリカ人が日本人に対し敵意を抱く結果を生んだ(その結果早期講和が不可能となった)ことであろう。
信長が明智光秀を悪く扱っていたというのは証拠がない話だ。信長に落ち度があるとすれば、光秀の扱いが悪かったことではなく、無邪気に大勢を持つ光秀を近づけてしまったことであろう。
このように、歴史の出来事の非本質的な部分を孫子の兵法に無理矢理当てはめ、針小棒大に語っている感じが強いのである。これでは出来事の本質を見失う。
加えて更に性質の悪いことに、いわゆるルーズベルト陰謀論をさも歴史的事実であるかのように語っているのは流石にどうかと思う。明智光秀の件も加えて、歴史的出来事の真偽についてあまりに無頓着であると感じた。
まあ、面白い逸話が多いので話のタネにはいいんだろうけどサ。